「あ゛あ゛あ゛」というガラガラした声で知られるエッジボイス。独特な響きの発声ですが、実はボイストレーニングの中でも特におすすめの練習法の1つです。
エッジボイスの練習で身につくのは、喉の余計な力を抜いたまま、声帯をそっと閉じ合わせる感覚です。この感覚は息漏れの改善やミックスボイスの習得、歌の表現力アップなど、さまざまな発声に活かせます。
ただ、「正しい出し方がわからない」「やりすぎると喉を痛めないか不安」という方も多いのではないでしょうか。
この記事では、エッジボイスの意味や歌唱に与える効果、具体的な出し方、喉を痛めないための注意点を解説します。安全に練習しながら、歌唱力アップにつなげましょう。

目次
エッジボイスとは、声帯を閉じた状態で「あ゛あ゛あ゛」と途切れるように出す、ガラガラとした響きの声のことです。
ホラー映画に登場する怨霊やゾンビの唸り声をイメージするとわかりやすいでしょう。揚げ物の油がはねる音に似ていることから、「ボーカルフライ」とも呼ばれます。
人の声は、喉にある2枚のひだ状の声帯が振動することで生まれます。エッジボイスでは、声帯を閉じ合わせたまま、ごく少量の息だけで振動させます。息の勢いに頼らないため、とても小さな音量の声になるのが特徴です。
実は、ボーカリストが歌い出しの一音目の前に「あ…」と少しかすれた声を添えることがありますが、あの繊細な表現の正体もエッジボイスです。単なるガラガラ声ではなく、歌に表情を与えるテクニックとしても使われています。


エッジボイスは、独特な声の表現として使われるだけでなく、声帯の動きや息の使い方を整えるトレーニングとしても活用されています。
ここでは、エッジボイスが歌唱に与える6つの効果を紹介します。
声が出にくかったり、高音になると喉がギュッと締まって苦しくなったりする原因の多くは、喉周りの筋肉の力みです。
エッジボイスは、体や首の力を抜き、最小限の息と声帯の振動だけで鳴らす発声です。そのため、練習として鳴らすだけで喉を締め付ける力みがリセットされ、楽に響く声を出しやすくなります。歌う前に取り入れれば、ウォーミングアップにもなります。
なお、エッジボイスを出していて喉が痛くなる場合は、力を入れすぎている証拠です。息をしっかり吐いて、全身の力を抜き直しましょう。
息漏れして声がかすれるのは、声帯がしっかり閉じていないためです。エッジボイスは声帯が閉じた状態で出る声なので、息漏れがなかなか直らない人でも、声帯を閉じる感覚をつかみやすくなります。
息漏れが減ると、芯のあるクリアな声が出せるようになります。
エッジボイスは声帯を閉じて出しますが、実は喉締め声の改善にも役立つ発声です。
喉締め声は、声帯を必要以上に強く閉じすぎることで起こります。閉じすぎると声帯が振動しにくくなり、苦しそうな声になってしまいます。
エッジボイスは力を抜いたまま声帯を閉じるため、「ちょうどよい閉じ具合」の感覚をつかめるのがポイントです。
チェストボイスとは、胸に響かせて出す地声に近い声です。男性は比較的出しやすい一方、苦手とする女性は少なくありません。
チェストボイスがうまく出ない場合、声帯の閉じ方が甘い可能性があります。エッジボイスで声帯を閉じる感覚が身につくと、安定したチェストボイスを出すコツがつかみやすくなるでしょう。
「力任せに張り上げずに、芯のある高音で歌いたい」と思ったときに必要なのが、声帯を無駄なくそっと閉じ合わせる技術です。エッジボイスなら、まさにこの「力みに頼らない声帯の閉じ方」を体感できます。
ミックスボイスとは、地声と裏声の中間の声のことです。習得すると声の裏返りを防げ、低音から高音までなめらかに歌えるようになります。エッジボイスで声帯を閉じる感覚をつかむと、地声と裏声の切り替わる音域での声帯のコントロールがしやすくなります。
ミックスボイスの出し方や息漏れの改善方法は、以下の記事で詳しく解説しているので、参考にしてください。
【あわせて読みたい】ミックスボイスで息漏れを防ぐ4つのポイント
ホラーな印象のあるエッジボイスですが、有名なアーティストも歌の中で効果的に使っています。エッジボイスを強調するのではなく、歌い出しの一音目にほんの少し混ぜることで、声に切なさや色気が加わります。
まっすぐ声を張るだけの単調な歌い方から、感情が伝わる歌い方に変わり、聴く人を引きつけやすくなるでしょう。使うタイミングは「よくある質問」で詳しく紹介します。

エッジボイスは一見難しそうですが、ポイントを押さえれば初心者でも出せるようになります。必要なのは、特別な筋トレではなく「徹底的な脱力」と「ほんのわずかな息」です。
ステップごとに詳しく見ていきましょう。
まずは肩・首・あごの力を抜き、口を半開きにしてぼーっとしましょう。体や喉に力が入ったままでは声帯がうまく振動せず、エッジボイス特有の響きが出ません。
軽くストレッチをしてから、ため息を「ハァ〜」と吐き出すように深呼吸すると、喉の力が抜けやすくなります。
リラックスした状態のまま、楽な高さで「あー」と声を出します。そこから、少しずつ音程を下げていきましょう。
ポイントは、普段出せる最も低い声まで下げたら、さらに低い声を出すイメージで発声することです。あるところで声が途切れ、「あ゛あ゛あ゛」と粒立ったガラガラ音に変わる瞬間があります。それがエッジボイスです。
「鳴らそう」として喉を締めるのではなく、「音程を下げていったら勝手に鳴った」という感覚が正解です。出ないからといって無理に力を入れる必要はありません。何度か繰り返すうちに、一定のリズムで出せるようになります。
エッジボイスが鳴ったら、喉の力を変えずに、「ハァ〜」と温かい息をそっと混ぜてみましょう。お腹から息を送る感覚を持つと、低く鳴っている声に響きが加わるのを感じられます。
無理に声を張る必要はありません。エッジのある声に息がすっと通ると、ガラガラした音から芯のある地声へなめらかに変わっていきます。この感覚が、力みに頼らない理想的な発声のフォームです。
最初は小さな声で練習し、慣れてきたら少しずつ声量を上げていきます。ミックスボイスの習得を目指す場合は、「エッジボイス→地声→裏声→地声→エッジボイス」となめらかに切り替える練習もおすすめです。


エッジボイスは、正しいやり方で練習すれば喉への負担が少ない発声です。ただし、やり方を間違えたり長時間続けたりすると、喉を痛める原因になります。
次の3つの点に注意しましょう。
喉を痛める原因で特に多いのが、エッジボイスのつもりで「がなり声」を出してしまうケースです。エッジボイスは喉の力を抜いて鳴らす小さな声ですが、がなり声は喉を締め、強い息で鳴らす声です。
練習中に次のような状態になっていたら、がなり声や喉締め発声になっている可能性があります。
この状態で練習を続けると、声帯に負担がかかります。いったん止めて、STEP1の脱力からやり直しましょう。エッジボイスとがなり声の仕組みの違いは、「よくある質問」で解説しています。
エッジボイスの練習では、大きな音を出す必要はありません。音量は最小限に抑え、1回の練習は数分で十分です。
喉の力が抜ける感覚を確かめられれば、目的は果たせています。長時間続けると声帯が疲れてしまうため、短い時間の練習を毎日続けるほうが効果的です。
少しでも「痛い」「喉が乾く」「イガイガする」と感じたら、すぐに練習をやめましょう。体調が優れない日や疲れがたまっている日も、無理をせず休むことが大切です。
痛みや声のかすれが続く場合は、練習方法を見直すとともに、ボイストレーナーや耳鼻咽喉科に相談することを検討してください。
日頃の食事で声帯のコンディションを整えることも大切です。声帯によいといわれる食べ物は、以下の記事を参考にしてください。
【あわせて読みたい】声帯に良いと言われる食べ物や食事のポイントを紹介

エッジボイスの使い方を身につけたい場合は、実際にアーティストの歌唱を聴いて学ぶのがおすすめです。
ここでは、エッジボイスが魅力的な女性歌手と男性歌手を紹介します。
エッジボイスが魅力的な女性歌手には、以下のようなアーティストがいます。
エッジボイスは、歌声のタイプを問わず使える表現です。気になる歌手の楽曲で、歌い出しやフレーズの語尾に注目して聴いてみましょう。
エッジボイスを効果的に取り入れている男性歌手は、以下のとおりです。
男性のエッジボイスには、感情をより強く伝えたり、色気を演出したりする効果があります。エッジボイスが使われている箇所を探しながら聴くと、歌い方の参考になるでしょう。
ここでは、エッジボイスに関してよく寄せられる質問とその回答を紹介します。ぜひ参考にしてください。
エッジボイスは、生まれつきの才能がなければできない発声ではありません。脱力のコツをつかめば、多くの人が習得できます。
出せない原因は、才能ではなく「喉の力を抜く感覚」をまだつかめていないことがほとんどです。この記事で紹介した「あごの力を抜いてぼーっとする」「音程を一番下まで下げる」という方法を試してみてください。
ただし、声のタイプによって鳴りやすさには個人差があります。もともと息漏れの多いハスキーボイスの方や、声帯溝症(声帯にわずかなへこみがある状態)などで声帯が閉じにくい方は、ガラガラ音を感じにくいことがあります。その場合も無理に喉を締めて鳴らそうとせず、力を抜く感覚を優先して練習しましょう。

エッジボイスとがなり声は、どちらもガラガラした響きがあるため混同されがちですが、発声の仕組みが異なります。エッジボイスは声帯だけを振動させるのに対し、がなり声は声帯のすぐ上にある「仮声帯」というひだも一緒に揺らして出します。
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振動する場所 |
息の量 |
喉の状態 |
音色・印象 |
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エッジボイス |
声帯のみ |
ごくわずか |
力を抜いている |
切なさ・繊細さ |
|
がなり声 |
声帯+仮声帯 |
強い息の圧力 |
締めている |
力強さ・激しさ |
ガラガラした音という共通点はあっても、体の使い方は正反対です。歌に繊細な表情を出したいときはエッジボイス、力強さを出したいときはがなり声と、表現に合わせて使い分けましょう。
がなり声の出し方や練習時の注意点は、以下の記事で紹介しています。
【あわせて読みたい】がなり声の出し方とは?練習方法や注意点、参考にしたい歌手を紹介
主に「歌い出しの一音目」や「フレーズの語尾」に、隠し味として少しだけ混ぜます。
曲全体でずっとエッジのある声を鳴らし続けるのではなく、言葉の頭にほんの少しかすれた音を乗せるのが効果的です。たった一音目に混ぜるだけで、聴き手には息の揺らぎや色気として伝わり、歌のドラマ性が引き立ちます。
エッジボイスとは、声帯を閉じた状態でわずかな息を振動させて出す、ガラガラとした響きを持つ発声法です。単なる特殊な発声ではなく、次のような役割があります。
特に、多くの人が苦戦する「声帯を閉じる感覚」を身につけやすいことが、エッジボイスの大きなメリットです。まずは肩の力を抜いて、ぼーっと脱力した状態から小さな声を鳴らしてみてください。
ただし、自分の声がエッジボイスになっているのか、がなり声になっていないかは、一人では判断しにくいものです。効率よく安全に習得したい方は、プロのボイストレーナーから直接指導を受けるのがおすすめです。声のクセや課題を客観的に把握しながら練習できるため、上達も早くなります。
エッジボイスをはじめとした発声テクニックを本格的に学びたい方は、ぜひ一度プロのレッスンを体験してみてください。
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