ピアノの上達に必要な練習時間の目安や時間の作り方
ピアノ上達方法・テクニック
2021/06/08
なかなかピアノが上達しない原因として多いのが「練習時間」です。
練習時間が不十分だと上達しないのは誰でもイメージしやすい結果ですが、実は長時間の練習も上達を妨げてしまうことがあります。
効率よく上達するにはちょうど最適な練習時間を知っておく必要があるのです。
そこでこちらの記事では、ピアノの上達に必要な練習時間を解説するとともに、ピアノの練習時間を確保する方法をご紹介します。
ピアノの上達に必要な練習時間は?
「ピアノをどれくらい練習すべきか」という問いにはいろいろな意見があります。
かの有名なショパンは「1日に3時間まで」、リストは「疲れ切って弾けなくなるまで」と述べています。
このように高名なピアニスト同士でもまとまらない「練習時間」の問題ですが、ここではさまざまな研究結果からピアノを効率良く上達するための練習時間について解説します。
1. ピアノの練習時間は1回40分程度が目安
ピアノの練習時間は、長くても1回40分程度を目安にすると良いでしょう。
東京大学の池谷裕二教授が行った研究によると、集中力に関与している前頭葉のガンマ波は、学習を開始してから40分経過すると急激に減少することが分かりました。
つまり、集中力は40分程度しか持続しない可能性があるのです。
このことから練習に集中するためには、1回の練習時間を40分以内に留めておいた方が良いといえます。[注1]
「もっと練習したい」と感じる方は、40分経過後に一度休憩を挟み、再度練習に取り組むと集中力を回復させることができます。
2. 短時間の練習と適度な休憩が上達速度を高める
先ほどの池谷教授の研究では、60分間連続で学習したグループよりも、15分を1セットとして休憩を挟みながら3セット(計45分)学習したグループの方が、学習内容が定着したことも明らかになっています。
そのため、ピアノの練習を行う際にも15分おきに休憩を取りながら練習していく方が上達速度を高められると考えられます。
3. 練習した内容を復習する時間も大切
ドイツの心理学者ヘルマン・エビングハウスは、人の記憶と忘却に関するメカニズムを研究しています。[注2]
エビングハウスは初めて覚える内容を、一定の時間が経過した後もう一度覚え直す実験を行いました。
そして「初めて覚えるときに必要だった時間」に比べ、もう一度覚え直すときに必要になる時間がどの程度短縮されているかを「節約率」で示しました。
節約率の計算式は以下の通りになります。
節約率= もう一度覚え直すときに必要だった時間初めて覚えるときに必要だった時間100
つまり、初めて覚えるときに10分かかった人が、次に覚え直すときに4分で済んだとすれば、節約率は4÷10×100=40%になります。
そして、この節約率が大きければ大きいほど、時間をかけずに覚え直せることが示されています。
エビングハウスは、初めて覚えてからもう一度覚え直すまでの時間を20分後・1時間後・9時間後・1日後・2日後・6日後・1か月後と設定し、節約率を求めました。
その結果が以下の表です。
覚え直すまでの時間 | 節約率 |
---|---|
20分後 | 58.2% |
1時間後 | 44.2% |
9時間後 | 35.8% |
1日後 | 33.7% |
2日後 | 27.2% |
6日後 | 25.4% |
1ヶ月後 | 21.1% |
この表から分かる通り、時間が経過するごとに節約率は低くなっていきます。
つまり、時間が経てば経つほど、一度学んだことを思い出すのに時間がかかってしまうのです。
ピアノでレッスンした内容も20分後に復習するとすぐに思い出せますが、6日後に復習すると出来ていたことが出来なくなり、思い出すまでに長い時間がかかってしまいます。
「週に1回、レッスンのときだけしっかり練習する」のではなく、毎日少しでもレッスン内容を復習する時間を確保した方が効率よく上達できるのです。
[注2]Theory Work:エビングハウスの忘却曲線とは?誤解と正しい理論・日常での活用法を解説
ピアノの練習時間を確保するには?
ピアノを練習するうえで「練習時間の確保」に悩む方は少なくありません。
中高生のピアノ学習者を対象に行われた調査では、約7割の学生がピアノと学校生活との両立を難しいと感じています。
また、別の調査では大学進学や就職など環境が変わって忙しくなると「ピアノをしている暇がない」と感じ、ピアノを辞めてしまう方も多いことが示されています。
どうすれば忙しい毎日のなかに、ピアノの練習時間を確保できるのでしょうか。
あらかじめスケジュールに練習時間を入れる
「空いた時間に練習しよう」と思っても、うまく時間が確保できない背景にはパーキンソンの法則の第一法則が働いている可能性があります。
パーキンソンの法則は、イギリスの歴史学者・政治学者シリル・ノースコート・パーキンソンが提唱している「仕事の量は、完成のために与えられた時間をすべて満たすまで膨張する」というものです。
つまり、30分で終わるはずの作業も1時間与えられると、1時間すべて使い切ってしまうということです。
そのため「空いた時間に練習しよう」と思っても、別の作業がその時間を埋めてしまうことが増えるのです。
このような事態を防ぐために、ピアノの練習時間をあらかじめ確保しておくとよいでしょう。
忙しい方にとって、まとまった時間を作ることは難しいかもしれません。
しかし、朝起きて15分、帰ってきて15分、寝る前に15分というように、1回15分の練習を積み重ねていけば、1日の中である程度の練習時間を確保できるでしょう。
練習の量より質を高める
練習時間を十分に確保できない場合は、練習の質を高めることも大切です。
練習の質を高めるポイントは次の3つです。
基礎練習を怠らない
「時間がないから曲の練習だけ」と、基礎練習を省いている方も多いかもしれません。
しかし基礎練習は正しい指の運び方を身につけると同時に、指の筋肉を鍛えるために必要なトレーニングです。
「1曲だけ弾けるようになればいい」という方は別ですが、「ピアノそのものを上達させたい」という方は、どんな曲にも対応できるよう基礎を大切にしましょう。
難しい箇所を集中的に練習する
同じ曲のなかでも、簡単に弾ける箇所と難しい箇所があるかもしれません。
短い練習時間で効率的に上達を目指すなら「難しい」と感じる箇所を集中的に練習しましょう。
難しい箇所の練習はなかなかうまくいかず、嫌になってしまう方も多いですが、片手ずつ練習する、ゆっくり演奏してみるというように、スモールステップで着実に弾けるようになっていきましょう。
練習ができない時間も上手に使う
音が気になる夜間や通勤・通学など、ピアノを弾けない空き時間も上達のためにできることはあります。
まず1つ目は楽譜を読むことです。
どれだけ指を上手に動かせるようになっても、楽譜が読めなければ、いろいろな曲にチャレンジするハードルが高くなってしまいます。
ちょっとした時間に楽譜を見て、音やリズムをイメージできるようになりましょう。
そして、2つ目は自分の演奏を録音して聴くことです。
演奏中は気づかなかったミスや不自然さに気づくことができ、次の演奏に活かせるでしょう。
【まとめ】
ピアノの上達には集中力が持続できる時間で密度の濃い練習を!
ピアノに集中して練習できる時間は、1回40分程度が目安です。
それ以上続けても集中力が低下し、効率が悪くなる可能性が高いです。
また、40分通して練習するよりも、15分程度の短い練習と適度な休憩が上達速度を高めると考えられます。
さらに、せっかく練習しても時間の経過と共に、練習した内容を思い出すまでに必要な時間は増えていくため、毎日少しでも復習しておく方が効率良く上達に近づけます。
忙しい毎日のなかで「空いた時間に練習しよう」と思うと、どんどん後回しになってしまいます。
ピアノの練習時間はあらかじめスケジュールに入れておくことが大切です。
どうしても後回しにしてしまい練習が難しい場合は、音楽教室に入会するのがおすすめです。
料金が発生するとなれば、きちんとスケジュールに組み込めるはずです。
また、質の高い練習ができるので、これまで独学でピアノを練習してきた方はさらなるスキルアップが望めるでしょう。
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